寝苦しい熱帯夜に最適の映画でした。
『迫り来る嵐』
国営の製鋼所のそばで、女性の死体が発見された。下半身は裸、身体には無数の刺し傷、そして喉を切り裂かれている。製鋼所の界隈では同じ手口の犯行が続き、犠牲者は既に3人目。
そこに絡んでくるのが製鋼所の保安部に勤める警備員のユィ。有能な警備員としてユィは製鋼所の模範工員として表彰されている。そんなユィはこの連続殺人事件を解明したくて仕方がない。捜査情報を聞き出そうと事件を担当するジャン警部につきまとい、ユィのことを師匠と呼ぶ部下のリウを従えて現場を検証するという具合で、連続殺人の解明に乗り込んでいく。
この映画『迫り来る嵐』のあらすじは、ザクッとこのような感じです。
では、この内容のどこが寝苦しい熱帯夜に最適なのか?
この映画で描かれている日常社会が「人殺しを怖がらない」のです。
ユィはただ連続殺人事件を解明したいと空回りしているし、他の工員は連続殺人に動揺していないし、捜査に当たっているジャン警部はこの連続殺人がいつもの事件だというかのような無表情です。映画の後半はユィのガールフレンドであるイェンズが重要になりますが、このイェンズも事件の犠牲者と同じ年齢なのに全く怖がっている様子がありません。
同じ連続殺人を題材にした、あの名作『セブン』でも連続殺人は社会に恐怖を与えていました。
でも、この映画『迫り来る嵐』は、無機質の日常社会を表現するかのように、いつも雨が降っているビジュアルで、灰色の空と灰色の建物、灰色の服・・・と、映画全体が淀んだ世界なのです。
この世界観に胸がザワザワとしますし、ラストでは1997年から一気に2008年に時間が飛ぶのですが、相変わらず淀んだ社会のたたずまいに絶望感を覚えました。
その意味で、ホラー映画にはない「不気味さ」に恐怖を覚えました。
映画『迫り来る嵐』は
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